目屋(めや)ダム
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FNP
Ver.1
とある日曜日。どうしても、どうしても行きたいダムがあって。でも時間がうまく取れなくて。でももう時間がなくて。
そんな気持ちを汲んでくれた夫が「ギリギリ行けるんじゃね?諦めたらずっと後悔してそうだから行ってみよう」と後押ししてくれたので家族乗っけて東北道をひた走っていた。
青森県で建設が進んでいる津軽ダム。建設の状況は定期的な見学会等開催されていて、現場からも、ダムファンな方々からも情報はよく入ってきていた。
津軽ダムの本体の工事はほぼ終わり、いよいよ試験湛水に向けての準備が始まるとの情報が入ってきた。
……ということは、津軽ダム上流60mに位置する目屋ダムさんは運用を終えて津軽ダム湖に水没すべく準備が始まってしまう!!!。
定期的に行われている見学会に参加して、目屋ダムさんにお礼を言いたかったんだけど、最後の機会となる見学会にも都合が付けられなくて申し込み出来なかった。
とにかくまだお仕事してる内に自分の目で見ておきたかった。見たからって何が変わるって訳でもないだろとか家族には言われたりもしたんだけど、水没後に見るのとはまた別なんだよ~~(´;ω;`)ブワッ
……というわけで。
来ました。
天端まで行きたい気持ちをこらえつつ。。。
精一杯背伸びして、腕伸ばして。
草の間から目屋ダムさんを愛でる。
愛でる。
逆光で眩しいけど愛でる。
お礼言う。
55年間ありがとう。お疲れ様。
目屋ダムさんに感謝を込めて、目屋ダムさんの生い立ちについてお勉強してみる。
岩木川水系の流域(黒線内)と目屋ダムの位置(黄色)
※takane@ダム日和さんご提供中のDamMaps:川と流域地図(暫定公開ページ)より、岩木川水系の流域部分を抜粋。
目屋ダムのある岩木川は世界自然遺産である白神山地から津軽平野へ流れ込む。河川の勾配はかなり急で、過去に幾度と無く大きな出水被害を受けていたそうだ。
そのため、国の直轄事業として岩木川の河川改修事業が行われる。しかし当初想定していたよりも大きな出水が発生し、さらなる河川改修が必要になるなど、困難を極める状況であったという。
そんな中、一足先に同じ岩木川水系の浅瀬石川に国内初の多目的ダムとして洪水調節と発電を目的とする沖浦ダムが建設され注目を集めたりなどもしたが、岩木川本流については問題を抱えたままとなった。
戦後、日本各地でカスリーン台風などをはじめとする、死傷者を多数出す災害が多発。国は河川総合開発調査5カ年計画を策定。計画の対象河川に岩木川水系が指定されたことにより、岩木川本流に多目的ダムを建設する計画が立案される。
建設にとりかかる頃、更に国は広域かつ強力な河川総合開発を策定し、岩木川水系及び十和田湖を含む奥入瀬川水系を対象とした十和田岩木川特定地域総合開発計画が決定され、目屋ダムは開発計画の中心事業として重要な役割を持つことになる。
ダム建設に伴い、西目屋村の集落83戸92世帯、水田や畑、山林が水没することになる。当然のことながら地元の反発を招き反対運動が起きた。
……反対運動が起きたって話はよく伺うのだが、目屋ダムはちょっと違った。受益地となる下流の住民から「米一握り運動」が展開されたのだ。
度重なる水害に苦しんでいた下流の住民たちにとって、目屋ダムは悲願であった。自分たちの希望の為に犠牲となる移転の住民に対し、感謝の気持ちを示す為、コメ一握りを差し出すという義捐金運動である。当時の金額にしておよそ150万円にものぼるコメが集まったという。
ダム建設者vs地元の民な図式なイメージだったんだけど、そこに受益者たちの感謝の気持ちが示されたという記録が残っているというのは、地域が必要としているダムだったんだなぁと、改めて存在の意味を感じることとなった。
目屋ダムが完成して55年。洪水調節回数は1959年に完成した直後に起きた1960年の洪水を皮切りに157回(うち25回は計画(流入量500立方メートル/s)を超える洪水)にものぼる。また、渇水時のかんがい用水の補給を目的とした緊急放流は8回行われた。
目一杯働いてくれている目屋ダムさんだが、さらなるパワーアップを目指して再開発が行われることになった。嵩上げとか堤体補強とかではなく、下流に更に大きなダムを建設するという計画である。それが目の前にそびえ立つ津軽ダムだ。9月末をもって目屋ダムは役目を終え、津軽ダムのダム湖の中で長い眠りにつくことになる。(堆砂ダムとして機能しつつですが)
( ´ー`)フゥー...
今立ってる場所も水没する。
55年ダムと共に働いてきた管理事務所も沈む。
右岸側から目屋ダムさんが見えるところは無いかなぁと、訪問経験のあるお友達に聞いたら右岸側には展望スペースが結構あるよと教えてもらったダム湖サイドから目屋ダムを望む。遠いけどよく見える場所だった。
2015年9月末日をもって運用を終了し、津軽ダムの試験湛水にむけて設備の撤去などを行う予定となっている。ゲートが取っ払われる前の姿を見ておきたかったんだ…。
更にダム湖側に目をやるとインクラインと取水設備。3キロほど下流にある、東北電力の岩木川第一発電所へ送られていた。津軽ダム建設に伴い、この取水口も水没することとなる。そのため、岩木川第一発電所も9月末をもって運用を終了している。
訪問時、作業中で周辺に車を停める余裕がなかったので写真は撮れていないのだが、壁面にクマゲラが描かれている建物だった。
訪問時、作業中で周辺に車を停める余裕がなかったので写真は撮れていないのだが、壁面にクマゲラが描かれている建物だった。
津軽ダム完成後は、津軽ダム直下に建設された津軽発電所で発電が行われる予定である。
目屋ダムさん、55年ありがとう。お疲れ様でした。
時間のない中、強行スケジュールに付き合ってくれた家族に感謝。m(_ _)m
時間のない中、強行スケジュールに付き合ってくれた家族に感謝。m(_ _)m
ダム番号 | 192 |
型式 | 越流型直線重力式コンクリートダム |
非常用洪水吐 | テンターゲート×1門 |
常用洪水吐 | テンターゲート×2門 |
低水管理設備 | ハウエルバンガーバルブ×1条 |
ダム湖名 | 美山湖 (みやまこ) |
所在地 | 青森県中津軽郡西目屋村 |
河川名 | 岩木川水系岩木川 |
堤高・堤頂長 | 58m・170m |
総貯水容量 | 39000千㎥ |
管理者 | 国土交通省 東北地方建設局 |
Web | - |
本体着工/完成年 | 1950年/1959年 |
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