長崎県の五島列島・野崎島に野崎ダムというダムがある。住人が島を離れてしまったため、現在は事実上の無人島となっている。
島内からは旧石器時代の遺跡など多数出土しており、太古より人が住んでいたと思われる島である。江戸時代には潜伏キリシタンが移住し、1908年には野首教会が建てられた。
1950年代には3つの集落が存在し、合わせて650人以上が暮らしていたが、高度成長期の集団離村などにより人口は急減していく。2001年には最後の島民とされた島の神社の神官が離島したとされる。
──そんな島に、ダムがある。
興味を持ったそのタイミングで、奇遇にも友人が「五島列島の教会巡りをしたい」と言ってきた。野崎島には野首教会がある。教会のついでにダム?ダムのついでに教会?みたいな状態で「行ってみよう!」とカジュアルに話に乗ってしまった町田であった。w
まずは計画
野崎島に行く方法をネットで調べた。野崎島は2キロ西にある小値賀島を主体とする小値賀町に属する島だ。野崎島に渡る方法として、小値賀島からの定期船があることが分かった。
※詳細はおぢかアイランドツーリズムにあるとおりなので具体的に行程調査を進めたい方はこんなの読んでないでサッサと飛んでいってくださいねw
ルート初案
飛行機で前日に福岡入りし、福岡港から「フェリー太古」を利用して一眠りしながら小値賀島に行き、町営船「はまゆう」を利用して野崎島に渡るルートを考えた。
「はまゆう」運航スケジュールを見ると、朝に1往復、夕方に1往復の、1日2便のみであった。朝の便で入島すると、夕方の便まで島に軟禁されることになるw(言い方…w 実際のところ、野崎島には色々な史跡や鑑賞スポットがあるので、真面目に島探索するとしたら夕方では間に合わないかもしれないぐらいな島であることは付記しておく)
……が、私が観たいのは「野崎ダム」だ。そして近隣の島の教会巡りが今回の旅の主目的でもあった。(ダム愛好家なのにダムは二の次なのかというツッコミは甘んじて受けるw)ダムと教会1つ見るだけで1日費やすのはちょっと時間が勿体ない……。
なんとかならないかなぁと思っていたら「海上タクシーを使うという手もありますよ」というアドバイスを得た。……が、なんだその「海上タクシー」とは???
小値賀島やその周辺の島の漁師さんが、漁船で島に渡してくれるのだ。しかも都合が合えば好きな時間に、だ。費用も「だいたい往復で1隻1万円位みておいて貰えば大丈夫ですよー」ということだったので、これは試してみる価値があるのではないか…?と海上タクシー利用案を考えることにした。
ルート改定案
飛行機で前日に福岡入りし、福岡港から「フェリー太古」を利用して一眠りしながら小値賀島……を越えて中通島(青方港)まで行き、レンタカーで中通島北端にある津和崎まで小一時間走り、津和崎港から海上タクシーで野崎島に渡るルートである。
そして実行
レンタカー店舗から海上タクシーの待つ津和崎港まで、コンビニで食料調達したり軽くパン食べたり、途中1箇所教会に寄り道しつつ1時間半。予約時間ほぼぴったりに到着し、挨拶もそこそこに津和崎丸に乗り込む。
天気が良かった(雲ひとつ無いピーカン☆)ので、船首に乗って、全身で海を感じながら野崎島へGO☆
教会が見えた!が港は一山越えた先にありw
旧野首教会。事前情報では、野崎港から徒歩20分ということだったが、結構なアップダウンであることと、色々と見どころ満載でゆっくり進んだので40分ぐらいかかったと思う。
※野首教会の訪問記は内容重複している部分も多いですがnoteで教会巡り記事を紹介しているので、お暇なときにでも観て下さいw → 上五島教会巡り(01)旧野首教会
旧野首教会を過ぎるとゲートがあった。周辺も柵……があるんだが……この島に吹く風の強さを物語る変形っぷりだった。(訪問時も多少の風はあったけど)
ゲートを越えてずんずん歩くと野崎ダム湖が見えてきた。その向こうの海と繋がって見えてしまい、防波堤のようにしか見えないが、真ん中に伸びているのが堤頂部だ。
上流(?)側から堤体を望むが、見事に堤防っぽいw
洪水吐は自由越流式だ。よくあるフィルダムの洪水吐スタイル。
野崎ダムについての説明パネルがあった。2001年竣工。このダムの受益地は隣の小値賀島である。小値賀島内にダムに適した土地が見いだせなかったため、野崎島に白羽の矢が立った。
繰り返すが、受益地は隣の小値賀島である。ここで水を溜めたところでどーすんだ?と思ったら、なんと海底パイプラインで小値賀島まで水を送っているのだ(驚)。送られた水は、小値賀島のかんがい用水として活用される。
ついでに言うと、野崎島には河川は無いw。じゃあ集水はどうしたんだ?ってーと、地表に溝掘って、地表に降り注いだ雨を表面から溝に誘導して、野崎ダムに溜めていってるのだw 上図にある野崎ダムから3本伸びてる線が導水路らしい。
天端を越えて野崎港の方に向かって歩いていたら、説明パネルが現れた。表面の水集める水路を承水路って言うそうだ。野崎ダムに来なかったら全く知らなかった。
もうなんというか、水を得るための苦労をひしひしと感じる構造物たちである。
海側から野崎ダムを望む。堤高29.8m、堤頂長217.0m。ちなみに、計画当初はもう少し大きい(高い?)ダムを予定していたようだが、旧野首教会など主要な観光資源などとの景観の兼ね合いもあり、少し小さく修正されたようだ。
小さく修正された分、貯水量が減るわけだが、小値賀島側で貯水池を作り、そちらでも溜めることで不足分を補っている模様。
更に下っていくと野首港に着く。ここから海底パイプラインで野崎ダムの水を小値賀島に送っている。天気が良かったことも相まって、海がとても美しかった。空の青、海の青を満喫した。
【注意事項】ダム番号 | 3096 |
型式 | アースダム |
余水吐 | 自由越流式 |
所在地 | 長崎県北松浦郡小値賀町野崎郷野首(野崎島) |
河川名 | 集水路水系 |
堤高・堤頂長 | 29.8m・217m |
総貯水容量 | 282千m3 |
管理者 | 長崎県 |
本体着工/完成年 | 1989年/2001年 |
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